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第8回勉強会

Session 1 原爆被爆者における免疫/炎症への放射線被曝の影響と個人差 (報告書が未提出なため、しばらくご登壇者である林奉権先生の笑顔をお楽しみください。申し訳ございません。担当者から提出があり次第UPいたします。)

Session 2 論文からのメッセージをとらえる 報告 by 中山寿巳子

Session 2では放影研の定金敦子先生を講師にお迎えし、疫学に関する論文「―小児におけるCTによるがんのリスク―」をもとに、医学論文をどのように読み込んでいくかを具体的に説明していただきました。

まず、講義の前半部分の概要をまとめておきます。

<論文と統計に関する基礎知識>

疫学とは目的は、健康問題の改善や病気の予防のために人間集団における健康状態やそれに関連する要因の分布を明らかにする学問であり、JAMAなど臨床医学雑誌に掲載される原著論文のほとんどは疫学に関するものとなっています。

疫学においては曝露(疾病もしくは帰結をもたらす潜在的な因子、健康に重要な影響を及ぼすような特性を持った危険因子)と疾病(病気、健康問題)との関連性を定量的な評価していくのが基本的な考え方となります。疾病の経過は、健康な状態から疾病の罹患→自覚症状出現→医療機関受診→診断確定→治療開始を経て、治癒、寛解、障害、死亡のいずれかに至ります。

疾病頻度の指標としては罹患率、有病率、死亡率、致命率・致死率が用いられます。これらの指標を関連の尺度である、相対危険(比:曝露と疾病の関連や因果関係を知る)、寄与危険(差:曝露が集団へ与える公衆衛生上の影響を知る)を用いて評価していくことになります。

曝露と疾病の関連の強さを知りたい場合は、相対危険(relative risk)を計算することになります。曝露の状況が異なる2群の疾病頻度指標の比、例えば、罹患率、累積罹患率、死亡率などが曝露と疾病の関連を示す指標となります。

相対危険では曝露の結果生じた疾病リスクの増加(または減少)を評価します。

  • 相対危険=1: 関連なし

  • 相対危険>1: リスクが増加(曝露は有害)

  • 相対危険<1: リスクが減少(曝露は予防的相)

「曝露群は非曝露群と比較して~倍、疾病に罹患する(死亡する)危険性が高い」と表現されます。

この相対危険の例としてオッズ比(症例対照研究で求められ、ロジスティック回帰モデル)とハザード比(コックス回帰モデル)があります。

疫学研究デザインとしては、記述疫学研究、生態学的研究、横断研究、コホート研究、症例対照研究、介入研究のいずれかの型を選択することになります。後者になるほど、根拠の強い研究となります。

曝露と疾病に関連が観察された場合、さらに因果関係(原因とそれによって生じる結果の関係)があるのかを検討する場合もあります。因果関係を判定する視点として、絶対的な基準というものはなく、時間的関係、関連の強固性、量反応関係、一致性、整合性といった視点を照らし合わせ、研究者が総合的に判断していくことになります。

疫学の論文では、研究デザイン、曝露や帰結の測定方法、追跡の方法、誤差の制御方法、先行研究や他の分野の知見との整合性、先行研究や他の分野の知見との整合性などに着目し、得られた結果が曝露と帰結の真の関係と言えるのかを見ていく必要があります。

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以上が先生のスライドを元にまとめた前半部分です。

後半部分では、前半の論文と統計に関する基礎知識をもとに、実際の論文を題材に着眼点や統計解析の読み方などの解説を伺いました。疫学方法論から見た論文の評価として、当該の論文には交絡の可能性があること、そして課題などについてもご説明いただきました。

この部分が今回の講義のキーポイントだったと思うのですが、報告者の力量不足で肝心のところをお伝えできないことをお詫びいたします。また、この部分の詳細は参加してこそ学べるものかなと思い、あえて割愛させていただきます。

<感想>

定金先生の美貌を思い出しつつ、一つ一つの要因を注意深く検証していく、先生の思考力の深さに改めて畏敬の念を抱きます。科学を追及する時に数学的、統計学的な思考の基盤として論理的、哲学的な思考力が極めて重要なのだなと感じました。

定金先生は疫学的素養を得た上で、論文を読むとさらに理解が深まるとおっしゃっていました。日本国内で公衆衛生学を学べるSchool of Public Health の講座は東大や長崎大学など一部の国立大学、私立大学にあるようです。また、2015年11月には公衆衛生専門職大学院連絡協議会(メンバー校:東京大学、帝京大学、京都大学、九州大学)が設立されています。ご興味のある方は

http://square.umin.ac.jp/sph/index.html

をご参照ください。

私のように理系の知識を持ち合わせていない場合、論文の行間を読み、考察できるようになるのは難しいかと思います。しかし、論文に書かれている統計の数字やデータがどのような意味を持つのか、少しでも正確に読み取り、伝えられるような日がいつか訪れることを願いつつ、勉強を続けていきたいと思います。

そして、最後に、このような勉強の場を設営してくださっている畝川さんはじめ、西日本医学英語勉強会の皆様に心より感謝いたします。

以上、福岡より中山寿巳子が報告いたしました。

(補足 by akoron) この日は、セミナー前に初めて自己紹介の時間を設けました。英日・日英の医薬翻訳者だけでなく、医学生、ライター、研究者、歯科衛生士、看護師、他言語翻訳者といった異業種メンバーにご参加いただきましたので、質疑応答の時間にお互いの質問意図が理解しやすくなったかと思います。 また、ランチ会では広島のソウルフードの「お好み焼き」、ディナーでは「イタリアン」と、食事を楽しみながらお互いの仕事を紹介し合ったり成果物を拝見したり、セミナーの続きの学術的なお話をご登壇者から伺ったりと、充実した時間を過ごすことができました。学会発表とは異なり、勉強会仕様のご準備・発表をしてくださった両先生に心より感謝いたします。


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West-Japan Medical English Workshop

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