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第2回勉強会

第2回西日本医学英語勉強会 報告記

by ほろこ

ちょうどaとtheの使い分けの難しさについて友人と盛り上がっていた折に冠詞がテーマの勉強会が開催されると知り、このたび初めて勉強会に参加させていただきました。

辻谷先生の講義は今までに読んだ冠詞についての本とは視点がかなり異なり、冠詞が係る名詞の「情報量」に着目するというものでした。名詞が持つ情報量に合わせて冠詞の用法が変わるということを英語と他の言語の比較で示して、そこから英語の冠詞の特殊性を明らかにし、その上でコンテキストに合った冠詞の使い方や日本語への訳し方を考えるという、数多くの言語をマスターしていらっしゃる辻谷先生ならではの内容でした。

多くの方が面白かった!とおっしゃっていたのが、“Such mutations may confer an advantage on the individual carrying the mutation”という英文の訳し方についてのお話でした。「そのような突然変異は個体に利益をもたらす」という訳では、さほど強い名詞ではない(情報量が小さい)Such mutationsが強調されすぎるため、「このような突然変異が起きると、個体に有利なものとなる」といった訳文にすると良い、というものでした。

「主語+は、」という日本語はかなり名詞を強調する言い回しなので、theを冠するような強い(情報量が大きい)名詞が主語のときに限って使うべきだというご説明に、今まで自分はSVOの原文であれば「SはOをVした」という単純な訳文を作ってしまいがちだったことに改めて気づかされました。翻訳支援ソフトを使った仕事中、翻訳メモリの訳文にとてもこなれたものがあると、どうやったらこういう訳文を出せるのだろうと思っていたのですが、少し謎が解けたように思いました。

今回の講義は、英語やフランス語などの冠詞がある言語であれば冠詞の種類によって、日本語のような冠詞が無い言語であれば言葉のイントネーションや助詞などによって「名詞の情報量を操作している」という「全言語に共通する文法がある」という考えを軸にしていました。学生時代に生成文法の講義を楽しみにしていた自分にとって、目から鱗がポロポロと何枚も落ちるような面白いお話が満載でした。

勉強会の後のオフ会でも、先生は実は生成文法理論の父であるチョムスキーの孫弟子だということや、全日本マスターズ競歩の優勝経験があり、ウォーキングに関する著書もあるほどのスポーツマンであることなどびっくりするお話をいろいろお聞きすることができました。好奇心旺盛で何事もきっちりと究める姿勢を持つ方だからこそ、今回の講義で教わった冠詞に関する理論を生み出せるのだな、と感心しきりでした。また、先生と同席していた皆さんとの言語学論議はとても刺激的で、言葉を扱うことの面白さを改めて感じることができました。

また次の勉強会もとても楽しみです。このたびは本当にありがとうございました!

(補足事項: 辻谷先生は「Humanitude(ユマニチュード)『老いと介護の画期的な書』 」の新しい訳書が出版されたばかりで、当日は本のご紹介がありました。第2回は、「冠詞」という普遍的なテーマであったので、特許・法律等の他分野の翻訳者、日独翻訳・通訳者、臨床検査技師の方等、バラエティに富んだ参加者の顔ぶれとなりました。 ディナーは、隠れ家的ダイニングで季節の前菜三種盛り、旬のお造り盛り合わせ、広島牡蠣、和牛トリュフソース、旬野菜等を美味しくいただきました! by akoron


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