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Essays No. 10

                    在宅勤務のススメ
                      by リスノ

 


西日本医学英語勉強会の皆さま、こんにちは。私は現在、小学生の娘を育てながら地方で医薬関係の翻訳(英日・日英)をしています。この度、Relay Essay No. 10を担当させていただくことになりました。お声をかけてくださった畝川さん、SKさんに感謝致します。

 

このページを読んでくださる方の中には、子育てと仕事の両立について悩んだり、不安に思ったりしている方がいるかもしれません。そのような方や子育て中の在宅翻訳者について興味を持ってくださる方に向けて、このエッセイでは在宅勤務に至った経緯と子育てとの両立について私の体験などをお伝えします。短くまとめたかったのですが長文になってしまいましたので、お時間のある際にどうぞのんびりとお付き合いください。

 

[医薬との出会いから現在まで]

<結婚前>

もともと文系出身で英語は勉強していたものの、理系科目は全くダメでした。そんな私が医薬の世界に出会ったのは、偶然、派遣社員として働くことになった製薬会社でした。最初は英文事務担当として入りましたが、次第に翻訳の仕事も頼まれるようになりました。多少、英語力はあったものの薬の知識も体の知識もなく必要に応じて職場で教えてもらいながらの翻訳で、仕事を分けてくださったこの会社の方々には今でも感謝しています。その頃訳したものは全く役に立たないレベルだったはずですが、翻訳に興味を持ち、基礎の翻訳通信講座を受け始めたのがこの頃です。

 

<出産前>

結婚で地方に引っ越すことになり、大阪市内にあった会社に通勤が難しくなったため派遣社員をやめざるを得なくなりました。しかし、未練があり在宅で仕事を続けられないかとダメもとでお願いしたところ、了承していただき、結婚と同時にフリーランス翻訳者となりました。

 

<出産~1歳>

切迫早産と診断されたため仕事は出産の約3ヵ月前から休みましたが、産後4ヵ月目から徐々に復帰しました。完全母乳育児をしていましたし、夜もよく泣く子だったため、体力的にとてもしんどかったことを覚えています。夜に仕事をするつもりが添い寝をしながら一緒に自分も寝てしまい、翌朝慌てたこともあります。抱っこしながらキーボードを打って納品したこともあります。それでも育児中の自分に、好きな英語を使った仕事を依頼してくださることがありがたかったです。

1歳を過ぎる頃から自治体が運営するファミリーサポートという制度を使って週1~2回子どもを預け、昼間に数時間仕事をするようになりました。それまでは主に夜間に仕事をしていたのでずいぶんと体が楽になり、対応できる仕事の量も増えました(時間ができると逆にサボって後で自己嫌悪に陥ることもしばしばありましたが・・・・・・)。
























初めて雪を触った1歳の頃の娘。子どもの成長は何よりの喜びです!

 


 

<保育園>

2歳から保育園に預けました。ちょうどその頃、今まで私に回してくださっていた仕事を社内で行うようになったからということで、結婚前に働いていた製薬会社からの仕事が終了しました。残念だったものの、それまで依頼し続けてくださったこと自体が奇跡的。ありがたいことに翻訳者としての経験年数が3年を超えていたため、その後、翻訳会社のトライアルを受験していきましたが比較的スムーズに合格することができました。最初はポツポツとしか依頼がありませんでしたが、1年前後でほぼ切れ目なく依頼をいただけるようになりました。

 

月曜日から金曜日まで、昼間は自分だけの時間になったのでとても開放感があり、うれしかったことを覚えています。でも、やはり自分の時間が増えると気が緩んで仕事から逃避し、自己管理の難しさを感じたりもしました。本来なら昼間に終えられるような仕事量なのに、ついオンライン検索と称して余計なページまで見てしまったり、まだ夜泣きもあったので寝不足で疲れて仕事が終わらなかったりして、結局夜に仕事をすることも多かったです。

保育園では保護者会(PTA)のクラス役員を1年間しました。年に数回、夜に集まったり、運動会の準備などをしたりしましたが、そんなときには仕事を前倒ししたり、減らしたり、夜中に回したり、時にはお断りしたりして調整しました。

 

<小学校入学~現在>

子どもは小学校に入学し、昼間は学校、放課後は学童保育に通う生活になりました。朝7時半過ぎに登校し、夕方5~6時頃に私が学童まで迎えにいきます。土曜日も学童保育があり、保育園の頃よりも仕事にあてられる時間が増えました。一方、宿題につきあう時間が必要になったり、行事が増えて学校に行く機会が増えたり、習い事を始めて送迎が必要になったりしています。

 

以上、これまでの経緯でした。ここからは子育てと在宅翻訳との両立について、今思うことを書いてみます。

 

[仕事とプライベートのメリハリ]

家で仕事をしていると言うと、よく聞かれるのがメリハリをつけるのが難しいのではないかという点。確かにこれは難しいです。いくら仕事をしていても家族から声をかけられれば無視するわけにもいきません。目の前に未処理の家事などが見えれば気になります。

 

私の場合、基本的に子どもが家にいるときは仕事を休んでいます。「仕事時間 = 子どもの外出時(保育園・学校・学童・習い事) + 子どもの就寝時」です。仕事の依頼に対するメールや電話、よっぽど切羽詰まっているときの仕事以外はこの基本を守ることでメリハリをつけるようにしています。

 

[在宅勤務でよかったこと]

体調不良時や行事の出席時に仕事の都合をつけやすいと思います。病院に連れて行ってから仕事を始めるといったことが会社勤務の方よりは気兼ねなくできるでしょう。参観日には参観の時間だけ学校に行き、その前後には仕事をしています。

 

[在宅勤務で不利だと思うこと]

お盆や年末年始、GWのときは会社員の方がいいなと思います。子どもは休みですし、自分も休もうと思えば休めるのですが、仕事の依頼があればどちらを優先するか育児と仕事との間で苦しみます。土日祝日はもちろん、有給休暇もありませんから、仕事を休めばその分の収入はなく、どこまで働きたいか悩みます。逆にそれを自分で決めたい、働いた分だけ収入を得られるスタイルがよいと思えるならフリーランスに向いていると思います。

 

[子どもを産んでよかったこと]

子どもがいると健康的になれます。在宅の仕事はややもすると夜型になったり、家に缶詰状態になったりしがちですが、子どもに規則正しい生活習慣をつけ、健康的な食事をさせるためには自分がお手本を示さなければなりません。

 

[子どもがいるため不利だと思うこと]

子どもを産んで悪かったことは何もありませんが、遠方への外出をしにくくなったとは思います。関西に住んでいるので、魅力的な翻訳関連のセミナーなどが東京などで開催されてもなかなか参加できません(ただ、家族の協力をどの程度得られるかによって個人差大)。

 

[医薬を選んでよかったこと]

自分や家族の健康にも役立つ知識が得られるのでよかったと思います。医学の進歩や人類の健康に微力ながら貢献できるのもうれしいです。文系出身ですが、比較的、勉強教材が多くあり、セミナーやスクールも充実しているので学びやすいと思います。

 

以上、今までを振り返ってみましたが参考になる部分はございましたでしょうか。製薬会社で派遣社員をしていた頃は、仕事が好きだったので「結婚退社しない」と言い切っていました。ですから、結婚が決まり、地方に引っ越すため派遣をやめなければならないと悟ったときには落ち込みました。でも、地方に引っ越したからこそフリーランスの翻訳者になれました。そして在宅で働いているからこそ出産や育児があっても無理のない範囲で仕事を続けてこられました。

 

[人生塞翁が馬]

Every cloud has a silver lining(すべての雲には銀の裏地がある:どんなに困難な状況や悪いことにも何かしらの良いことがある)。誰でも(特に女性は)引っ越しや出産、育児、介護などでそれまでのキャリアが途切れそうになるときがあると思うのですが、いったんやめるとブランクを埋めるのは難しいかもしれません。そんなときには在宅勤務という方法もあるということを思い出していただければ良いかもしれません。

どんなに充実した仕事をしていても人間関係が悪ければ日々つらいものです。その点、地方在住ながら在宅勤務という形で好きな英語を使った仕事を続けつつ、一番身近な人間関係である家族関係を維持できて自分は感謝しています。

 

ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。皆さまの幸せを願って次の方へバトンをつなぎます。


                                                                         
 
























 

 

 

 

西日本医学英語勉強会
West-Japan Medical English Workshop

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